これからいつまでも



 底冷えする冬空の下。
 珍しくあゆより早く来た俺は、ぼーっと何時ものベンチ待っていた。
 ふと、背後に誰かが来た気配。
 まぁ、確認するまでもない。
 そう思った瞬間、ふわりと首に掛かる暖かい物。
 まるで、天使の羽が俺を包み込むような、そんな温もりを感じる。
 のけぞるように背後を見上げると、俺の顔を照らす太陽の日差しがゆっくりと覆われる。
「今来た所だ」
「待った? って……うぐぅ、答えるの早すぎだよ」
 呆れた様子で笑う。
 掛けて貰った物を首に巻き直しながら、釣られるように俺も笑う。
 しっかりとまき直したおかげで冷たい冬の大気から保護される首まわり。
「うん、なかなか良いなこれ、暖かい」
「ホント? 良かった」
 マフラーを指差しながら答える俺に、あゆは嬉しそうに微笑む。
「でも、こういう恥ずかしいのは勘弁して欲しい」
 指し示す指をつーっとマフラーを伝わせていく。
 それは、自然にあゆの首元へとたどり着いた。
「で、でも、たまには良いと思うよ」
「まぁ、たまにならな」
 一生懸命訴えるあゆに思わず苦笑する。
「ところで、俺は何時までこの体勢でいれば良いんだ?」
 のけぞった体勢を維持し続けるのはなかなか辛い。
「あ、ごめんね」
 あゆは慌てて謝るとベンチを回り込んでくる。
 だが、首はマフラーで繋がっているので、
 首だけは近づけたままで体を回り込ませようとする。
 当事者である俺が言うのもなんだが、かなり滑稽だ。
「ちょっとの間マフラー外せばいいだろ」
「だって、そんな事したら祐一君二度とやってくれないでしょ?」
 別にそんな事は無いのだが、あえて言わない。
 自分からしたいわけじゃ無いしな。
 その間もあゆはベンチ表の方へ来ようと一生懸命だ。
「なんというか……可愛い奴だな」
「?」
 唐突な俺の言葉に不思議そうな顔をする、あゆ。
 まぁ、当然か……。
 それにしても、通りすがりの人が向けてくる視線はなかなか耐え難い物がある。
「確かに微笑ましいんだろうけどさ……」
「うぐ? さっきからどうしたの?」
 ひらひらと手を振って何でもないとアピールする。
 で数分たってやっとあゆは俺の隣に落ち着いた。
「うぐぅ……疲れた」
 ちょっとバテている、あゆの頭をグリグリと撫でてやる。
「馬鹿な子ほど可愛い」
「うぐ? なにそれ?」
 よもや自分の事だとは思ってないらしい。
 思わず更にぐりぐりとする。
「わ、わわ。駄目だよっ。髪の毛ぐちゃぐちゃになっちゃう」
 そう言いながらも嬉しそうに身もだえするあゆの眼前にぽんっと袋を差し出す。
「?」
「お約束のもんだ」
 よく分かってないあゆに袋を押しつける。
 こいつの事だから自分の誕生日も覚えてないのかもしれない。
 まぁ、そのうち自分で気付くだろ。
 そんな事を考えながら、あゆの手を取って立ち上がる。
「さて……と、百花屋でも行こう。流石に寒い」
「え、あ、うん」
 袋と俺の顔を何度も見比べているあゆを促し、手を繋いだまま歩き出す。
「わ、わ、待ってよ。祐一君」
「あ、そうだ。あゆ」
 俺は立ち止まると、ぐっとあゆを引き寄せ耳元に囁く。
「おめでと」
「え?」
「それと味見させてくれるの楽しみにしてるから」
「え? え?」
 袋の中は、真冬でも少女に花咲く薄桜。
 きっと彼女を口元から華やかに彩ってくれるだろう。
 さて、来年の誕生日は何処を飾ってやろうか……。
 そんな風に互いの年を重ねていける事がとても楽しみだった。



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